今回は担当者が大学時代にデザインを学んでいたこともあり、芸術に関する書籍を紹介したいと思います。
著者は現代日本を代表する画家の一人であり、京都造形芸術大学の教授でもある千住博氏。
私は以前より氏の代表作である『ウォーターフォール』シリーズが好きで、軽井沢千住博美術館にも行った事があります。
ただ本書の存在はまったく知らず、たまたま立ち寄った書店で目に入り、気になるタイトルだった事もあり手にした次第です。
芸術って一体何なのだろう?
芸術って一体何なのだろう?何のためにあるんだろう?そんな疑問をみなさん一度は抱いたことがあるのではないでしょうか?
本書『芸術とは何か ―千住博が答える147の質問』はそんな漠然とした疑問から芸術鑑賞の仕方、画家の資質や果てはお金にまつわる話まで、11の章に分類された様々な質問に著者が一問一答形式で答えるスタイルで記載されています。
タイトルの通り147もの質問に対し、全体でも276ページしかありません。
その為長いものでも5ページ程度、短いものでは2行でまとめられており、芸術に関して広く理解したいと望まれる方だけでなく、芸術に近寄りにくい印象を持たれている方や興味のある部分だけを知りたいという方にもお勧めできます。
ただし、「芸術とは~」と銘打たれていますが、著者が画家であることから多くが絵画に関する内容となっています。
たとえばこんな疑問はないでしょうか?
抽象画を見慣れていない人に勧める作品についての質問です。
いくつもの無作為な線がキャンバスを横切っていたり、あるいは一面塗りつぶされているだけであったり、風景画や人物画等と違って抽象画は何が描かれているのか、どう鑑賞したらいいかわからないという方は多いのではないでしょうか?
ここでは現代美術の巨匠であるジャクソン・ポロックを勧めつつ、氏は抽象画の見方についてこう述べています。
『その作品を目にして「何のこっちゃ」と思わずに、単にその色や形のみに注目してみてください。(中略)勢いよく走る線は、まさに勢いよく走る線として、爆発的な色の塊はまさに爆発的な色の塊として、すなわち目の前に広がる形、色のみが画家が世の中に生み出したかったもののすべてということなのです。』
考えるな、感じるんだ!といったところでしょうか。
芸術とはなにか
さて、本書の最大の問いかけ「芸術とは何か」。
実はこれと同じことを大学時代最初の講義で先生から問いかけられました。
当時はただ絵を描くことが好きなだけで芸術について深く考えたこともなく、明確な答えは出せませんでした。
芸術とは何か、その答えは本書のはじめの方で触れられている岡本太郎氏の「人間」という言葉が重要な意味を持ちます。
著者は、岡本太郎氏の「職業は人間」という言葉はまさに芸術と人間の関係を的確に言い表したものだと述べています。
それがどのような意味であるのか、興味が沸いた方は是非本書を手に取って芸術理解の扉を開いてみてはいかがでしょう。