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『警視庁科学調査官』(服藤恵三)/文藝春秋~刑事モノと科学モノが好きなあなたへ

こんにちは、にっしーです。
今回も小説のご紹介です。それほどたくさん読書しているわけでもありませんが、読んだ本の中では小説が多いですね。思い返せば中学の頃、初めて手に取った小説は赤川次郎さんの「三毛猫ホームズ」シリーズでした。主人公やその仲間たちは刑事(事件を解決に導くのは猫)なのですが、思えばその頃から現在に至るまで「刑事モノ」が好きな気がします。今回ご紹介するのは本物の元捜査官が書くノンフィクションです。

本の情報

この本は、2021/3/25に文藝春秋から出版されました。著者の服藤恵三(はらふじけいぞう)さんは、1981年に警視庁科学捜査研究所(科捜研)研究員として入庁し、その後さまざまな難事件で解決に貢献した「伝説の人」です。

作者はどんな人?

入庁後15年ほどは科捜研の研究員でしたが、オウム真理教の地下鉄サリン事件の捜査に特別派遣され、そこで大きな貢献をしたのをきっかけに、科学的知見を基に刑事と一緒に捜査を行う最初の「科学捜査官」となりました。その後和歌山カレー毒物混入事件、国立療養所医局アジ化ナトリウム混入事件など、全国で発生した多くの事件捜査に科学的立証の立場から貢献しました。

本書の特徴

当然ですが、本物の捜査員としての著者の実体験の記録ですので、リアルな捜査の場面が描き出されています。地下鉄サリン事件の取り調べにおける容疑者とのやり取りのシーンには息をのむ思いでした。さらに著者が抱いていた、従来の科捜研の考え方に対する違和感と、もっと積極的に、科学で捜査に貢献しようとする著者の戦いの様子は、警察組織に留まらない普遍的な組織改革と共通するように見えて、興味深い内容でした。

本書のメッセージ

刑事とともに捜査の最前線に立ちながら「科学と捜査の融合」を志した著者は、従来のやり方を変えなければと強く考え行動したため、身内の敵も多く辛い思いをしたようです。この本の一番のメッセージと思われる「あとがき」に、その時の教訓が記されています。
あとがきの一説によると、何をしてもうまくいかないときこそ、自分を信じて、自分に投資し、能力を高め、チャンスがやってきたときにそれをつかむための実力を養う期間である旨書かれています。とはいえ著者に与えられた試練は普通の人にはなかなか訪れない、スケールの大きなものなのでそのまま参考にはならないかもしれません。しかし、逆に著者の様な輝かしい経歴を持つ人にもどん底の日々があったと思うと、同じ人間として根底にある共通点を感じてしまいます。

さいごに

この本をぜひ読んでほしい人は、
・刑事ものが好きで
・(科学捜査なので)どちらかというと理系、もしくはITに強い人で
・職場というものを一通り見てきた社会人経験5年以上、ぐらい
な人です。ニュースで聞いたことのある有名な事件の捜査の裏側を知ることができたり、警察組織と一般企業の意外な共通点を発見できたり、読む価値があるかと思います。そして(私はそんなにありませんが)組織を変えたい!という熱い思いを持つ人も、その気持ちを一層燃え上がらせることができますのでお勧めです!

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